過去を再体験すること

以前の記事の中で、

「現実を体験できるのは一度きり。その人生はもう二度と体験し直すことはできない。
だけど、それを小説の中では何度でも味わうことができる。」

と書いたことがあったのですが、小説でなくても現実の出来事も、何度も繰り返し体験し直すことが可能なのかもしれないと思った話。記憶というものによって。

過去に起こった「出来事」そのものは変えられないのだけど、その変えられない出来事から、何に気づいて、どんなことを見出して、どんな感情を体験するかは、その都度自分で選び直すことができる。(記憶自体を都合よく曲げてしまうという意味ではなく)
だから、ひとつの過去をきっかけに、いつでも、後退することもあれば、前へ進むことだって可能なのかもしれない。
ときにとても辛く、できることなら今すぐに忘れてしまいたいような記憶もあるけれど、それでも記憶が残されているかぎり、人は何度でもそこから新しい気づきや体験を積み重ねていけるのだと。

自分自身、過去にこんな体験をしたことがありました。
再び父の話、しかも12年も前の話で恐縮なのですが。
その頃仕事のストレスや体調の悪さなどにより、精神的にかなり参っていて、感情という感情が麻痺したようになっていた頃に、父の死が重なりました。

以前にもここの記事に書いたのですが、父の病気について死の直前まで知らされなかったショックもあり、当時、目前で父を見送りながら、何か頭の中に霧がかかったように、現実感がないというか、現実を直視出来ていない状態で、「悲しい」という感情すらまともに感じられませんでした。
それは2度と戻ってこない時間で、どれほど後悔しようが2度とやり直すことは叶わないと思い、その後長いことずっとその頃の自分を責めている状態が続きました。

そのまま11年経った昨年のある日。
突然、何の前触れもなく父の最期の様子がありありと、鮮明に蘇りました。
不思議なのですが、本当にリアルで、当時あんなにもぼやけていたはずの記憶が、細かいところまで、父の表情ひとつ、動きのひとつまで鮮明に思い出され。
何も見えていなかったと思い込んでいた自分の中に、そういう記憶が残っていたことに本当に驚きました。

それで私はそのとき、記憶の中で再び父を看取るという体験をしたのでした。
今度は、しっかりと父を見つめて、当時は気づけなかった様々なことにも気づくことができ、まるで今初めて見送るかのように、沢山泣いてしまいました。
あの頃に感じるはずだった感情を、情けないのですが、11年も遅れてからリアルに感じていたのでした。
目一杯感情を吐き出したあと、それまで抱き続けていた罪悪感や自己嫌悪や後悔が静かに薄れていって、悲しみ以外の、重苦しかったものが剥がれていく感覚がありました。
(以前このことをブログに書いていたのを思い出し(→「11年目」)、あらためて読んでみれば、自分のあまりの人としてのダメっぷりと、当時の感情にまかせて書いているのがアイタタタな感じでお恥ずかしい。)

その日は父の月命日でした。もしかして、延々と引きずり続けている私を不憫に思った父が、もう一度チャンスを与えてくれたのではないか…なんて。
こちらの気持ちが変化したからでしょうか、気のせいかその後父の遺影の表情が、心なしか優しくなったような…?あ、気のせいですか。はいすみません(^ ^;)

長々と自分事をすみません…何が言いたかったかのかというと、人って普段から、過去の出来事を思い出す度、そこから何度も新しい感情体験を繰り返しているのだなあと。

以前にはわからなかった物事の意味がわかったり、気づけなかった相手の様子に気づいたり、それは、おそらく自分自身が変化したからで。
自分が何かしら変化したとき、成長したとき、視点が変わったり、視界が開けたりしたとき、同じ出来事から得る体験も変わる。
相手の善意だと信じていたものが、実はそうでなかったと気づくこともあるし、その逆もあり。
突然相手の言葉の真意に気づいたり、心の内を理解できるようになったり。
そうして新たな感情体験を繰り返して、自分の内面において、何度も過去をやり直しているのかもしれない。
もうこの世にいない相手とだって、そういう意味でやり直せるのかもしれない。
生きている者の自己満足かもしれないけど、そうとも言い切れない何か、目に見えないレベルで何かが伝わる気がしていて。不思議なのだけど、気のせいかもしれないけど、そんな気がして。
だから、どれだけ時が経ってからでも、もう目の前に相手がいなくても、気づいた瞬間に、ちゃんと眼差しを向けることが大切な気がして。

おそらく、自分にもう一度その過去と向かい合う準備ができたときに、再び鮮明に記憶が蘇るのかなあ。
その繰り返しを延々と生きているような気がして、気が遠くなるような、だけどひとつひとつの記憶と向かい合うことに、すごく意味がある気がします。

とりとめもない話を失礼しました。

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