台風、大丈夫でしょうか。
被災地へのさらなる被害が出ないことを祈りたい。
私の住んでいる地域も直撃のもよう。今は風もあまりなく、晴れ間ものぞいています。
嵐の前の静けさのなか、観たかった映画に行ってきました。
『フジコ・ヘミングの時間』。
思った以上に混雑していました。
そして、思った以上に、とてもよかった。
古き良きものが大切に守られているパリの街並みと、フジコ・ヘミングの織り成す、ファンタジーと厳しい現実が溶け合ってひとつになったような、独特の味わいの世界。
彼女の着ている服、髪飾り、アンティーク調の家具、絨毯、床の軋む音、食器、壁にかけられた絵、モニュメント、ピアノの上でくつろぐ猫、それらが創り出す色彩、彼女の話す声のトーン、ゆったりと流れる時間。
そしてピアノ。
その全てが、一枚の完成された絵のようで、不思議なくらいに調和していて、素敵でした。
それぞれが居場所を得てしっくりとおさまっているという感じで、愛されて、満たされて、幸せそうな。
欠けていいものはひとつもないかのように。
ドイツで(だったかな)、久しぶりに再会した愛犬が彼女に駆け寄り、全身で嬉しさを表現する姿に、ジーンとしてしまった。
フジコ・ヘミングの演奏は、私の中で、様々な色彩の糸が丹念に織り込まれた織物のイメージです。
愛するものたちや、人生のひとつひとつの瞬間、様々な想い、祈りが、幾重にも幾重にも重なり、あの唯一無二の音色が生まれるのかな。
そんなふうに思って聴くラ・カンパネラが美し過ぎて、泣きそうになりました。
観終わったあと、何かに「満たされた」幸福感でいっぱいになりました。
とても贅沢な時間を過ごすことができました。
良きものに触れたあとは、台風に備えて早めに帰宅。